ちゃがまの超テレビ生活

アラフォー主婦の「ちゃがま」が観た映画、海外ドラマなどの感想を綴っていきます。個人的な感想と映画に関係するサブカルチャーやら音楽にフィーチャーするブログ。

又吉直樹原作『劇場』を鑑賞

ご無沙汰しています。前回の投稿から1億光年空いてしまいました。

この間、妊娠出産、慣れない育児のバタバタでブログの更新が止まってしまいましたが、ようやくブログを書く時間ができてきたので、マイペースに更新していこうと思います。

と言っても、日々鑑賞することだけは続けておりました!むしろ育児の合間に観る映画やドラマは自分にとって至福の時間。

ブログを更新しない間に観たものも、少しずつ思い出して書いていけたらと思っています。

さて、ちゃがまの育休明け、1発目の記事は何にしよう?と考えていたところ、もうこの映画のことを書きたい!誰かに伝えたい!という映画に出逢ってしまいました。

それが『劇場』です。私はAmazonプライムの配信で鑑賞しました。

 

劇場

劇場

  • 発売日: 2020/07/17
  • メディア: Prime Video
 

 

 

主演の山﨑賢人は『キングダム』や、直近ではNetflix配信の『今際の国のアリス』でも、話が進むにつれて、正義感の強い若者に成長していく役どころを演じていて、言わばど直球に王道のヒーローが似合う俳優さんというイメージでした。

ところがこの『劇場』で演じた永田という男は、今までの山﨑賢人の演じたどの役とも遠い、おおよそダメ男(家賃や光熱費さえ払わず彼女の家に転がり込むヒモ)です。

売れない劇団の主催者&脚本家である永田(山﨑賢人)は、自分の不甲斐なさを彼女の沙希(松岡茉優)にぶつけ、そんな劣等感に満ちた永田の鬱憤を、全て受け止めてくれる沙希に対して苛立ちを感じてしまう。 

印象的だったこんなシーンがあります。

ある日、永田は好きな作家の小説を買って帰りますが、家に帰ると机の上には、先ほど買ったばかりの同じ本が置いてあります。

この本は沙希が永田のことを想って、内緒で購入したもの。

同じタイミングで買ってきてしまい、そのことが嬉しい沙希とは反対に、永田は勿体ないと、何故か無性に沙希に対して腹が立ってしまうのです。

このシーン一つとっても、永田の身勝手さが際立ち、どんな時も深い愛情で支えてくれる沙希に対する思いやりが欠けているように感じます。

しかし、一見破綻しているかのような関係の中でも、確実に幸せな時間は存在していました。

下北沢の古びた1Kのアパートは、二人にとって唯一安全な場所。ここにいれば安心なのだと。沙希は永田に言い、彼はどんなに救われたことでしょう。

そんな二人の同棲生活は、永田が創作に集中する為、一人で部屋を借りることであっさり終わりを迎えます。 

それから沙希の生活は少しずつおかしくなっていきました。お酒の量が増え、精神的に不安定になっていきます。

ついには、沙希は東京を離れ、実家に戻ることを決めます。

と、あらすじはこんなところで、これだけ聞くと、ダメ男とそれを献身的に支えた彼女が、救いようのない結末を迎えるように思いますが、そこはさすがの行定監督です。

ただの恋愛ものでは終わらせません。

映画のラストには、驚きの展開が待っています。原作にはないシーンと聞いたので、小説を先に読んだ方もびっくりだったかもしれませんね。

正直、永田と沙希の恋愛の結末にハッピーエンドは想像できなかったし、実際ハッピーエンドではなかったかもしれないけど、終わってみれば、この映画はこのラストシーンを見る為の2時間だったのだと思えます。

ハッピーエンドかどうかは、観ている人によってきっと違う。

ここに辿り着くまでの馴れ初めから、幸せで穏やかな普通の日常、壊れかけていく二人の関係。それらをずっと観てきた人間だけが、このラストシーンに心震えるのだと思います。

このシーンが訪れた瞬間、私はぶぁぁと感情が溢れてきて、自然と涙が流れました。

そして、このラストシーンに向かっていく永田を演じた山﨑賢人は、彼の俳優人生において、最高峰の演技をしたのではないかと個人的に思います。もちろん松岡茉優の演技も素晴らしいのですが、彼女がすごい女優さんであることは前から気がついてました。

今回は、ただただ山﨑賢人を大絶賛したい!!

永田と沙希が自転車に乗って桜を見に行くシーン。今思えば、もうここからあのラストへの序章が始まっていたのだと。思い出しても胸がドキドキしてきます。

本当はこの素晴らしいラストシーンについて、事細かく考察したかったのですが、そうすると完全なネタバレになってしまうので我慢。

若い頃は、自分が何者かであるに違いないと信じて疑わなかった。独りよがりで大事な人を傷つけてしまった。

自分が、何かを諦める逃げ道を探していた。誰かに尽くすことで、依存することで、貴重な時間を埋めていた。

永田と沙希は、自分の若い頃にも通じるところがあって、観ていて心が痛む場面もあったけど、観終わってから不思議と心があたたかくなり、今横にいてくれる人たちを一番に大事にしたい、そんな風に思える映画でした。

ぜひご鑑賞ください!!

〜ちゃがまのお星さま〜

★★★★⭐︎(星4つ)

これから山﨑賢人はダメ男を演じてほしい